こんな本を読んだ | ビジネス・フォー・パンクス

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2017年10月16日 一覧に戻る

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ビジネス・フォー・パンクス
ジェームズ・ワット (著), 高取 芳彦 (翻訳), 楠木 建 (監修)


人生は荒波だ。
しかしそれ以上にビジネスも荒波だ。

パンクの精神で目の前の荒波を乗り越える。
自分自身の使命のために。
そして自分自身が信じる価値のために。

スコットランドの地で産声を上げたクラフトビール『ブリュードッグ』の創業者が語る破天荒かつブレない道を往くビジネス指南書。
起業者も会社員も読めば勇気をもらえる一冊。


プロローグ さあ、世界を変えてやろう
1章 戦う自由人のための起業論
2章 未来を見る反逆者のための財務論
3章 迷える子羊のためのマーケティング論
4章 新時代の破滅的パンクのためのセールス論
5章 野望に燃える海賊船長のためのチームビルディング
6章 ひたむきな自由人のための時空論
7章 パンク起業家の頭の中

2016年秋に発売当初、書評系ブログなどで目にする機会が多かった一冊。
気になって購入はしていたもののKindleに積ん読のままで、読了したのが2017年6月。

著者ジェームズ・ワットは新興クラフトビールメーカー『ブリュードッグ』の創業者。
古くさい業界に一石を投じながら徐々に存在感を増し今では世界各国に輸出するようにまでなった。

自分が飲みたいウマいビールを作りたい、それがジェームズ・ワットの思い。
そのためには様々な障壁・障害を乗り越えねばならない。
数ある奮闘劇が自伝映画のように熱く語られていく。
そう、まさにそれは壮大なドラマ。

会社が進むには?を日夜考え続け障壁を蹴散らし、人々にブリュードッグを知らしめる。
口にした人を魅了するビールそのものも本物ならマーケティングも破天荒。
しかもSNSを中心としたネット上での口コミも味方にし古くさいマスメディアをこき下ろす。
しかしそれらにも現在の世情に合った確固たる自信と方針があればこそ。

ジェームズ・ワットは単なる傾奇者ではない。
本書を読めばお分かりの通り、ビジネスの進め方においては逆にオーソドックスな王道を進んでいる。
銀行とのだまし合いのようなやり取りやYouTubeでの派手な展開ばかりに目がいくが実は非常に堅実であるのだ。

その証拠が第二章。
第一章で起業論を熱く述べたあとで財務論が述べられる。
タイトルがまたパンク。『未来を見る反逆者のための財務論』ときた。
マーケティング論やセールス論や社内チーム論などの前に、まず財務。
どれだけキャッシュが重要かが述べられている。

事業計画なんていらない。企業は日々、2種類に選別される。
機敏な企業と、死ぬ企業だ。
さっさと前に進めないなら、降参するしかない。

強烈である。
 

起業の失敗が多い理由はとにかく単純だ。
せっかく稼いだ金を、実際に必要のないものにまであれこれと使ってしまうのがいけない。
起業するなら、すべての資金を最大限に生かす方法を身につけ、自分たちより経営基盤の固まった既存企業の10倍、手持ちのキャッシュから効果を引き出す必要がある。

キャッシュは絶対の存在だ。
揺るぎない忠誠を誓わなければならない。スタートアップではわずかな資金源が命綱になる。
資金は会社の血液であり、酸素だ。嘘じゃない。
血液と酸素がなければ、人も会社も溺死する。
どんなに小さな金額でも、そこに命がかかっているつもりで守り通す必要がある。
実際、命がかかっているのだから。

財務。それは倫理観の低い、高給取りの計算屋の仕事。
そう思っていないだろうか。間違いだ。
目を覚まして、姿勢を正し、一歩踏み出そう。
スプレッドシート界のスーパースターになるときがきた。

ビジネスにおけるパンク的思考の決め手は、とにかくルールを破ることだ。
しかし財務に関しては、ルールを破ろうと考える前に、ルール通りのやり方を体得し『スターウォーズ』のヨーダの域まで高めなければならない。
将来、経験を積み、安定したキャッシュフローが懐に入るようになれば、成功に一歩近づける。

大胆な綱渡りも必要だ。
少ない資金を限界まで生かそうとすれば、綱から落ちかけることも、相次ぐ破産の危機にダウン寸前まで追い込まれることも当然ある。
そして、極限のリスクが次々訪れる中を生き延びるには、金回りを完全に把握し、自分のあらゆる決断が、商売上どういういう意味を持つのか理解していなければならない。
キャッシュフロー、利益、損失といった言葉は新しい相棒だ。
気を引き締めて、財務をマスターしよう。

第二章ではこれ以外にもいかに企業にとってキャッシュが重要かが述べられているし、細かな用語の解説まで行っている。
できるだけ早く入金し、できるだけ支払を遅くする。
売上ではなく利益を最優先で考える。
このような当たり前のことをいかにスピード感を持って行うかが滔々と語られるのだ。
単なるパンクじゃない。

 
続いてマーケティング論やチームビルディングが語られていく。
これがまたアツい。

ぼくにとってブリュードッグは、基本的に商売ではなく、革命の戦いだ。
できるだけ多くの人をクラフトビールに夢中にさせるという使命を果たすためにやっている。
いつまでだって続けるつもりだ。ビールはぼくにとって愛してやまない子どもみたいなもので、養子に出すなどあり得ない。
愛しているものを人手に渡す理由があるだろうか。売り払う目的でものをつくる連中は、長く残るものを生み出しはしない。
自分の利益を最大化したいだけで、事業が後でどうなろうが気にしないからだ。
そんなやり方で価値のある企業をつくることは難しいし、ブリュードッグのような会社は絶対に生まれない。
今の顧客は羊でもカモでもない。賢く、ごまかしを見抜く目を持っている。

ぼくらが売り出したビールはスコットランド北東部で嫌われた。それも完璧に。
味も、パッケージも、ブランドイメージも、ロゴも、すべてが嫌われたのだ。
最初の半年はまったくと言っていいほど売れなかった。
それでもぼくらは気にしなかった。
他人のためではなく、ただ自分で楽しむために醸造したのだと言っていた。
ぼくらは完全に自分中心で、自分で飲みたいビールをつくっていた。

今の時代、会社はマーケティングがすべてだ。
自分や自分の会社のやることすべてがマーケティング活動になる。
現代ではブランドは会社のものではなく、顧客のものだ。
そして、顧客の行動がブランド形成に深く関わるようになったために、マーケティング活動は双方向の対話になった。
巨大ブランドが古くさい掟や時代遅れの技術で業界や市場を独占し、支配する時代は終わったのだ。

自分の夢を他人に託して、何かした気になるな。

唯一の、そして本当の問題のありかは、自分で行動を起こせず、何も生み出せない人間の心の中だ。

ブランドは最も価値のある資産だ。
適切に扱えば、世界を変える戦いで最強の武器になる。

21世紀のマーケティングでは、予算がゼロであってもまったく問題はない。
予算不足というのはいかにも制約のように見えるが、実は有利ですらある。
今は「広告は死んだ。新メディアよ、永遠なれ!」という時代だ。
汗水たらして稼いだ金を広告なんかにつぎ込むくらいなら、燃やして明かりにする。
燃やすだけなら、ブランドの尊厳に傷はつかないからだ。

優秀なチームと強力な企業文化がなければ、意欲と情熱を持った質の高い人材を抱えることができず、そのせいで高水準の商品・サービスが生み出せず、そのせいで高い価格を正当化できなくなる。
そして金がなければ、理想のチームはつくれない。
つまり、企業文化が内部崩壊を始めたら、もうヘルメットをかぶり、後ずさりして、耳をふさいでいるしかない。
いったん崩壊の道を進み出したら、後戻りは不可能だ。

文化は与えられるものではなく、みずからの手で積み上げるものだ。
意のままに創作したり、でっちあげたりはできない。
文化とはどんな行動をとるかであって、何を言うかではない。
そして、その行動こそが大きな意味を持つ。
文化は一貫性のある行動をしているうちに副産物として生まれ、すべての行動を通じて育ち、時間をかけて発達していくものだ。

ぼくはオフィスに二つのデスクを持っている。
片方はデジタル用、もう片方はアナログ用だ。
(中略)二つのデスクをくっきり分けていることで、やろうとしている仕事の種類に合った「ゾーン」に頭を切り換えられる。

 
自分自身のKindleで過去最高のハイライト数でまだまだ引用したいのだけれどきりがないのでこの辺りで。
最初こそ、「アッツぃなあ」と思いながら読み始めたが徐々に引き込まれていく。

それはやはり『理にかなったアナーキーさ』が腹落ちしていくからなのだと思う。
これが『人に迷惑をかけるだけのアナーキーさ』であったならここまで納得はできないだろう。

全編を通して訳も非常に読みやすい。
ぼんやりと起業を考えているなら非常にオススメ。
この本を読んで勇気を得るかここまではできないと諦めるかのリトマス試験紙になるのではないだろうか。
勇気を得たのなら、もう一冊カタいオーソドックスなマニュアル的な起業本とセットで左右を固めたらいいのではないだろうか。

新しい企画を考えたり新規事業を考える部署の方にもマーケティング論は参考になるかもしれない。
方向性が違えば役に立たないが、どちらかと言えばプロダクトアウト的な考えが中心なのでメーカーや新しいサービスを考え出す領域ならオススメ。

随所にパンクの有名バンドやボーカルの名言が散りばめられているので、パンク好きにはたまらないだろう。
(僕はメタル系好きだったので半分ぐらいしか分からなかったが)
またビジネス界の著名人の一言も挿入されているので、人名や言葉からまた辿っていくのも面白いかもしれない。

昨今のビジネス書にはない雰囲気をまとった本なので食わず嫌いも多そうな印象だがぜひご一読をオススメ。



ビジネス・フォー・パンクス
ビジネス・フォー・パンクス
ジェームズ・ワット (著), 高取 芳彦 (翻訳), 楠木 建 (監修)
紙の本の長さ: 379 ページ
出版社: 日経BP社 (2016/9/1)
ISBN-10:4822251705
ISBN-13:978-4822251703
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文責:株式会社サイドシーン 代表取締役 田中 正
田中取締役、略してタナトリ。
某代理店に15年勤務の後、2011年福岡にて株式会社サイドシーンを立ち上げ。
OOHと呼ばれる交通広告・イベント・屋外広告を中心に
インスタグラム等のネットを絡めたプランニングを得意としています。
また各地人脈のおかげで全国各地の交通媒体も掲出OK。
効果の面、予算の面、様々な角度からアドバイスが可能です。
ラジオCM、印刷&ノベルティ等々も併せてワンストップでOK。
福岡のOOH広告とインスタグラムならサイドシーン!

株式会社サイドシーン
http://www.sidescene.jp/



 


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