こんな本を読んだ | シリアル・イノベーター ─ 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀

こんな本を読んだ | シリアル・イノベーター ─ 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀
2017年11月06日 一覧に戻る

  1. トップ >
  2. こんな本を読んだ >
  3. こんな本を読んだ | シリアル・イノベーター ─ 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀

シリアル・イノベーター ─ 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀

アビー グリフィン (著), レイモンド L プライス (著), ブルース A ボジャック (著)



イノベーターの前に『シリアル』がついたシリアル・イノベーターとはなんぞや?
成熟した組織で革新的製品・サービスを生み出す実践的手法の担い手のこと。
 1)重要な課題を解決するアイデアを思い付き、
 2)その実現に欠かせない新技術を開発し、
 3)企業内の煩雑な手続きを突破し、
 4)画期的な製品やサービスとして市場に送り出す――
この過程を何度も繰り返せる人材を単なるイノベーターと区別してシリアル・イノベーターと呼ぶ。

局面を大きく変えるようなブレイクスルーな商品や発明は、まぐれでは起きにくいということが分かる内容で、しかもアイデアや発明は製品として世に出て役に立って初めて役割を全うするものであって、ギーク的に発明だけを行えばよいというものでもないというのが詳細に解説された良書。

個人のひらめきや努力と、組織としての会社の折り合いを如何につけるか。
それを考えると世に出なかった商品も数多いのだと思う。

かなり固めの語り口で読了まで時間がかかったけれど、ここに記されている会社と従業員とのあり方はイノベーターに限らず社会人としても参考になる部分が多数あると思う。



はじめに
イントロダクション
日本語版刊行にあたってーーシリアル・イノベーターという生き方
第1章 成熟企業のブレークスルー・イノベーション
第2章 イノベーター主導型プロセスとは
第3章 顧客とのエンゲージメントを築く
第4章 信頼と尊敬で組織を動かす
第5章 シリアル・イノベーターの特性
第6章 シリアル・イノベーターはどこにいるか?
第7章 才能のマネジメント
第8章 読者へのラブレター

 

一つだけではなく、複数のイノベーションを連続的(シリアル)に生み出す人物。それがシリアル・イノベーターだ。人や組織にとって重要な課題を解決するアイデアを思い付き、必要に応じてその実現に欠かせない新技術を開発し、企業内の煩雑な手続きを突破して、画期的な製品やサービスに発展させ、市場に送り出す。

また、企業に所属する人物でも、スティーブ・ジョブズのようにトップに位置し、どの製品アイデアを追求するのか自ら決定を下すシリアル・イノベーターもいる。

連続してイノベーションを起こす人物。
たった一つのイノベーションでもなかなか難しいことであるが、複数のイノベートを起こす人物とはどのような人間であるのか。

例えば冒頭に出てくるトム・オズボーン。
有名なP&Gの社員でありシリアル・イノベーター。
彼が開発した生理用ナプキン『オールウェイズ・ウルトラ』は今でこそ年間数十億円を稼ぐ商品であるが、それを開発した彼は解雇ギリギリにまでなったと言う。

別に反乱を起こした訳でもなく、勤怠が悪かった訳でもない。
当時のナプキンは『液体をとらえる道具』の面が強かった。
そして紙おむつを基盤に考えられていた。
そこで彼は漏れ防止だけではなく、装着感が素晴らしい商品の開発を始めた。

しかし彼が開発を始めたのはその当時売れ筋だった商品の否定から入り、且つ会社はその売れ筋商品に非常に力を入れていた時だった。
トムが開発し商品化しようとした新製品は、現在売れている商品のチームからだけなく社内からも白眼視されることになる。

社員としての身分も怪しくなる中、彼は理解のあるマネジャーや他の事業部のサポートも得て、プロトタイプがアメリカ本国ではなくアメリカ以外の国でまず発売されることになる。
結果は華々しいものであり、それから社内サポートも万全になり、未だに後継製品がP&Gに利益を生み続けているという。

まさにプロジェクトX並みの波乱万丈感。
しかしあるあるな面でもある。

組織として一旦動き出せば数人数のベンチャーでもない限りそうそう途中で路線変更は難しいだろう。
ましてP&Gのようにグローバルで製造/販売を行うのならばなおさら。

しかしシリアル・イノベーターはそのような壁を乗り越えながら道を行くものだと著者は言う。
このようなシリアル・イノベーターはどのような人間なのだろう。

パースペクティブ(Perspective)
ほぼすべてのシリアル・イノベーターが、新製品は売れなければならず、利益を出さなければならないという強い信念を口にしている。

モチベーション(Motivation)
新しいものを生み出そうとする人にとって、モチベーションは非常に重要な特性である。
このことは創造性に関するほぼすべてのモデルに、モチベーションが含まれている(Amabile 1988; Lovelace 1986)ことからもうかがえる。

構え(Preparation)
シリアル・イノベーターはその形成期に、イノベーションに向けて準備を整えていく。彼らは仕事をしながら学び続け、知識領域を拡大する。彼らは生涯を通じての学習者である。

プロセス(Process)
第一に、シリアル・イノベーターのプロセスは動きが多い。彼らはプロセス全体を通じて、顧客と技術、市場の間を行き来する。
第二に、シリアル・イノベーターのプロセスは直線的ではなく、重複や反復、フィードバックが発生する。企業の典型的な製品開発プロセスが直線的なのとは対照的である。
第三に、シリアル・イノベーターのプロセスは、製品の発売後も続く。シリアル・イノベーターは自身が生み出した製品を顧客がどう思うか、どのように使うか、そして次に自分は何をすべきかを知りたいと思っている。
さらに、自身の製品が人々の生活にどのような影響を与えているか、具体的な事例も探し出す。

社内政治(Politics)
結果として、組織の中で人とうまく交わるコミュニケーションスキルを身につけなければならない。
すなわち、社内で政治的駆け引きを行い、解決しようとする顧客の課題に関して承認を得なければならないのである。

シリアル・イノベーターはこのような素養を備えて初めてそう呼ばれる。
これらの頭文字でMP5モデルと呼ぶという。

しかしシリアル・イノベーターと呼ばれる人物も最初からそうだった訳ではないし、単なるアイデアマンであるだけではないと言う。

また、シリアル・イノベーターは技術的な教育を受け、イノベーションに必要な基本的な能力を備えたうえで入社する。しかし、ブレークスルー・イノベーションを創造するには、技術教育だけでは不十分だ。それだけでは単に、難しい課題に対して新たな技術的解決策を開発できるにすぎない。

シリアル・イノベーターは、リソースの確保において、常に他のプロジェクトや取り組みと競合関係にある。したがって、プロジェクトの承認を得るため、どのように企業に働きかけるべきかを学ぶ必要がある。

ブレイクスルーを起こす、と確信したのならそれが社内でGOがかかるように周囲や上司に働きかけて商品化・製品化するまでをトータルで見る必要があるという。
研究だけでも駄目でありマーケティングありきだけの商品でも駄目であると言う。

シリアル・イノベーターにとっては、すでにわかっていることよりも、わかっていないことを把握することのほうがはるかに重要である。

イノベーションの道筋には、往々にして二つの制約が待ち構えているものだ。その二つの制約とは、「科学的な制約」と「組織上の制約」である。

このような研究者気質な面も持ちつつ、社内政治に立ち向かうことも恐れずに信念を貫きこのような制約も超える努力を行う。

ある意味スーパーサラリーマンであろう。
理想の社員像でもあると感じる。
しかしやはり一人では物事はうまく進まない面も多々ある。

一つ目は、マネジャーは人間関係に基づいたフレキシブルなマネジメントを行い、それを通じて創造力をサポートする方法を学ぶべきであるということ。
二つ目は、シリアル・イノベーターが正式な人事制度にどう反応するか、マネジャーに理解させること。
そして三つ目は、シリアル・イノベーターを配置する場所を、彼ら独自のやり方で仕事ができる自由とサポートを受けられる場所とすることである。

逆にいえば、このようにフレキシブルにマネジメントしなければ、シリアル・イノベーターのポテンシャルは無駄になってしまう。

(中略)実は優秀なマネジャーは単にシリアル・イノベーターから注文をとるわけでも、野放しにするわけでもない。
彼らは、巧みにシリアル・イノベーターを励まし、挑戦させている。

シリアル・イノベーターは一度自分を理解し効果的に管理してくれるマネジャーを見つけると、長年そのマネジャーと共に働くことになる可能性がある。
あるシリアル・イノベーターは同じマネジャーのもとで一七年間働いたという。二人は組織の中を共に異動し、組織の技術部門のはしごを上っていった。

そこでシリアル・イノベーターとコンビを組むマネジャーが重要になるとのことである。

日本で言えば本田宗一郎氏と藤沢武夫氏のような間柄であろうか。
技術だけでも、社内政治だけでもイノベーションは起こせないのである。

シリアル・イノベーターの特徴や性格を解説しつつ、そのポテンシャルをどのように社内で活かすかを本書では詳細に述べている。
つまり研究開発面と、経営面の2つを同時に解説していることになる。

新しいアイデアを形にするまでのロードマップも参考になったし、今後人数が増えた場合にどのように組織を組むべきかも参考になった。
サンプルストーリーも多く掲載されているが、冒頭にも書いたように語り口が少し固めなのでそこをクリアしたら得るものも多い本だと思うしおすすめであると思う。


1440分の使い方 ──成功者たちの時間管理15の秘訣 (フェニックスシリーズ)
シリアル・イノベーター ─ 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀
アビー グリフィン (著), レイモンド L プライス (著), ブルース A ボジャック (著)
紙の本の長さ:384ページ
出版社:プレジデント社; 1版 (2014/3/29)
ISBN-10:4833420805
ISBN-13:978-4833420808

Amazonで詳細を見る


[ビジネス][ビジネス書][書評]
[イノベーション][研究開発][イノベーター]
[企業論][組織論]
[マネジャー][チーム][チーム論]


文責:株式会社サイドシーン 代表取締役 田中 正
田中取締役、略してタナトリ。
某代理店に15年勤務の後、2011年福岡にて株式会社サイドシーンを立ち上げ。
OOHと呼ばれる交通広告・イベント・屋外広告を中心に
インスタグラム等のネットを絡めたプランニングを得意としています。
また各地人脈のおかげで全国各地の交通媒体も掲出OK。
効果の面、予算の面、様々な角度からアドバイスが可能です。
ラジオCM、印刷&ノベルティ等々も併せてワンストップでOK。
福岡のOOH広告とインスタグラムならサイドシーン!

株式会社サイドシーン
http://www.sidescene.jp/



 


"こんな本を読んだ"カテゴリーの他の記事

 

Leave a Reply